旅の途中、ふと立ち止まったみうは、道端に、捨てられてかなり時間がたっているであろう焼き肉を見つけた。
「かわいそう。
「誰にも食べてもらえないなんて……
みうは焼き肉を拾い上げ、慈愛に満ちた表情でしばらく見つめた後、唇をそっと押し当てた。
見る見るうちに焼き肉は生気を取り戻し、肉汁たっぷり、ジューシーな霜降り肉に生まれ変わった。
「嬢ちゃん、すごい力を持っとるのう。
振り向くとそこには、いかにも手先口先だけは達者そうな老人が、杖にもたれて立っていた。
「わしにもチューしてくれんかの。
「お爺さん、どこか具合でも悪いの？
「特に悪いところはないんじゃがの、体が言うことをきかんのじゃ。
「わしも昔は名のある格闘家だったんじゃが、年には勝てんでの。
「嬢ちゃんにチューしてもらえれば、少しはシャキッとするかもしれん。
「私でお役に立てるのなら、いくらでもキスしてあげますよ。
「さあ、ほっぺたを出してくださいな。
「おお、ありがたい。さっそくお願いしますじゃ。
そう言うと、老人はいきなりズボンを脱ぎ始めた。
「ちょっ、ちょっと、お爺さん、ズボンは脱がなくてもいいですよ。
「わしは全身くたびれとるんじゃ。
「体中くまなくチューしてくれんか。
「そんな、耳なし芳一じゃないんですから。
「そうだ、耳も忘れんでくれよ。
「耳はチョー気持ちええんじゃ！
老人はズボンを脱ぎながら、なんだかとっても嬉しそうだ。
「お爺ちゃん耳の穴から毛が生えてるじゃないですか。だいたい、どうして真っ先にズボンを脱ぐんですか？
「嬢ちゃん、耳から毛が生えたジジイはいやか？
「別に、そんなこと……
老人はいつのまにかパンツ一丁だ。
「どうせワシはジジイじゃ。耳からちちれっ毛がいっぱい生えた汚いジジイじゃよ。
「嬢ちゃんだって、こんな毛の生えたジジイの耳なんか、ペロペロしたくないのは、わかっとるんじゃ。
「ペロペロする気は最初からありません！
「キスは1ヶ所だけですよ。
「どこでもええか？
老人の濁った目の中で、煩悩の炎がメラメラと燃え上がるのを、みうは見逃さなかった。
「どうせ1ヶ所なら……
老人は自分の股間をじっと見つめた。
「お爺ちゃん！（怒）
「じゃあホッペでいいわい。
ズボンをはきながら、老人はしぶしぶ承諾した。
みうは老人の頬に軽く唇を当てる。
すると、老人はみるみるうちに若さを取り戻した。
「○×△☆？？
今みうの前に立っているのは、鋼金のような肉体をもった、若き美形の格闘家であった。
「……かっこ、いい……
聖職者なのに、目が " はぁと
" になっている、みうであった。
「俺は珍幻斎。よろしくな。
「あ……はい！
「……私はみうです。
今の彼ならペロペロしてもいいかなと一瞬思ってしまった、修行の足りないみうであった。
――と、その時、突然ゾンビの群れがあらわれる。
「危ない！
珍幻斎はみうをかばいながら、次々とゾンビを一撃で倒していく。
しかし、大量の敵をさばききれず、最後の1匹がみうに襲い掛かった。
（ゾンビの数え方は「匹ではなく「体かもしれませんが、なんとなく「匹にしました）
「みう！
「大丈夫です。えいっ！
みうが正拳をくらわすと、ゾンビは一瞬にして消滅した。
「すごいな、君。
「全然力入ってないのに。
「アンデッドは平気です。
「モンバットが出たら逃げますけど。
「俺は肉体の力で敵を砕くが、君は聖なる力で敵を滅するというわけか。
ふたりの間に流れる心地よい時間と空間。
しかし、それは長くは続かなかった。
突然、珍幻斎が苦しみ出したかと思うと、元の老人の姿に戻ってしまったのである。
「ありゃりゃ。
「元に戻っちまったわい。
「効果は一時的なんじゃな。
「そうなんです。もっと修行すれば永遠の効果が得られるらしいんですけど、まだまだ……
「チューの仕方や場所で、効果が違うかもしれん。
「ホッペじゃなくて、ここに……
老人が股間を指差す前に、みうのギャラクティカマグナムが炸裂した。
(原作は知りません＞＜）
哀れ老人は地球の周りをぐるぐると回り続けて、最後は人工衛星になってしまった。
（バターになったでも可）
「しょうがない、オナゴがひとりではいろいろと不安だろうから、わしがお供してやろう。
「その方がもっと不安です！
（第１部完）