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□ 『多様性の中で』 ロード・ブラックソーン著 □

我らの共有すべき美しいブリタニアにおいて、非難されるべき好戦的な種族による侵略や、賢明ではない種族による略奪が続くかぎり、これらが引き起こす無用な悲しみを悼む民衆にも劣らず、他の種族に対する、狩猟種族の本質ともいえるべき虐殺行為を、私はもちろん是認することは出来ない。

それでも我々は、ラットマンやリーザドマン、オークといった、同じ大地を共有する他の知的生命を尊重することはできないであろうか。
何故、我々は対話を試みようともせず、目に付くさま彼らを敵とみなし、殺めようとするのか。
ウィスプが我々に好意を寄せようとしているかぎり、我々は彼らを撃つ手段を持っていないではないか。
――もちろん、矢が彼らを射抜けない訳ではない。

これらの生物をただ有害とみなすことは、彼らの明白なる知性を否定することであり、また彼らを虐殺することについての反動を、真摯に考えなければならない。
もし我々が、我ら人間を殺すことが犯罪であると考えるなら、それはオークを殺すことも犯罪であると考えるべきではないだろうか。

同時に、もしリザードマンが人間を殺めたとき、我々は彼らの無知と愚かさを許すことは出来ないのだろうか。
獣性を顕にし、我々のもつ高い道徳性を放棄するべきでない。

もちろん、我々は反撃するべきではないと、そう言うつもりはない。何故なら我々の間にさえ、争いがあり、飢えが起こり、武器を持つからである。
――なお、我々はこれらが最悪の事態にならぬよう保護してくださっている、ロード・ブリティッシュ陛下に対して、最大の恩があることを忘れてはならない――
最近ではトリンシック聖騎士団グランドマスター、ジェイフェスがその命と引き換えに行った不幸な遠征がある。これこそ愚かであった。

私は以前ジェイフェスと会ったことがある、彼は他の聖騎士同様、その内に激しい炎を秘めていた。
彼には、いまだ最大限の敬意を持っているし、誰として彼のオークに対する、あの激しい憎悪を消せはしまい。
だからこそ、彼があの戦いで帰らぬ人と果てたときも、彼の著書『トリンシック陥落』にあるような、彼自身の幼少期における、あの体験を克服できずにいたのだろう。
彼のような力強く素晴らしい男でさえ、盲目のうちに囚われてしまう。とても残念なことだ。

彼らオークが、人の子をつれさり、自らの子として育てた物語をご存知だろうか。
この異種族間の物語は、我々が、ただ忌むべき獣とみなすものによって為されたのだ。

聖騎士ジェイフェスの過ちを繰り返してはならない。
我々が他種族を傷つけ迫害すること、それはすなわち、我々が自らを傷つけ、追い詰めているに過ぎないのだから。